アミノ酸特集〜アミノ酸のはたらき
疲労回復
グルタミン酸は疲労除去に欠かせないアミノ酸です。
非必須アミノ酸ですから体内での合成は出来るのですが、年齢と共に合成できる量は減少します。
年齢と共に疲労感が出てくるのは、疲労を軽減してくれるグルタミン酸の摂取量が不足し、同時に体内での合成量が減ってくるからです。
筋肉を動かすとグルコース(糖分)が筋肉中でエネルギーとして使われる時、疲労物質(乳酸)が発生します。アラニンは使われたグルコースを再生してくれ、疲労除去とエネルギーの再利用に役立ちます。
筋力強化
バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは特に筋力アップには欠かせないアミノ酸です。
これらのアミノ酸は他のアミノ酸と分子構造が違い、BCAA(Branched Chain Amino Acid=分岐鎖アミノ酸)と呼ばれています。筋肉に含まれるタンパク質のうち、必須アミノ酸の大部分(35%)はBCAAです。
筋肉をつくるタンパク質であるアクチン、ミオシンはBCAAが主成分です。切れた筋繊維を修復するには、BCAAは欠かせないアミノ酸です。運動前のBCAAはスタミナ維持に役立ち、運動後のBCAAは筋肉痛の予防に役立ってくれるのです。
筋肉中のグルコースを使い切った後、BCAAは運動エネルギーとして使われますが、この時に疲労物質の乳酸は発生しません。
マラソンなどの長時間の運動では、BCAAを使った運動エネルギーが必要となりますが、BCAAがあらかじめ筋肉に蓄えられていないと筋肉繊維が破壊されてしまいます。
運動すればするほど筋肉繊維が減少してしまうため、運動前、運動中、運動後のBCAA補給が欠かせません。
集中力の向上、記憶力のアップ
脳は神経細胞、グリア細胞、毛細血管でつくられています。
一般的に脳細胞と言われるのは神経細胞のことで、繰り返し同じ刺激を与えることで、脳細胞が記憶する物質(樹状突起)をつくります。
グリア細胞は脳で使われるエネルギーをつくったり、血液で運ばれてきた栄養や酸素を脳細胞に渡す役割があります。
複雑な受け渡しをすることで、脳内にアンモニアなどの毒性物質が入ることを防ぐのです。
この働きを「BBB(Blood Brain Barrier)=血管脳関所」と呼ぶのですが、細胞の原料になるアミノ酸も、このBBBを通過するのは難しいのです。
ところが、イソロイシン、アルギニン、チロシン、フェニールアラニン、グルタミン酸の5つのアミノ酸は、このBBBを難なく通過することが出来ます。
脳細胞に渡された5つのアミノ酸は、脳細胞がエネルギーをつくる原料になります。
また、チロシン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸は脳細胞を刺激し、作業効率をアップさせます。
脂肪燃焼
生活習慣病の予防にも効果のある「脂肪燃焼」にもアミノ酸は欠かせません。
私達が生きていくために必要な、最低限のエネルギーを基礎代謝、安静にしている時に消費されるエネルギーを安静時代謝といいます。
1日に消費するエネルギーの60~75%を基礎代謝と安静時代謝で占めています。
中年以降に脂肪がつきやすくなるのは、基礎代謝や安静時代謝が低下して、消費されないエネルギーが脂肪として蓄えられるからです。
基礎代謝や安静時代謝のほとんどは筋肉で消費されます。筋肉を動かして、筋繊維を太くすることで代謝エネルギー量はアップします。
筋肉量が増えることでカロリーを消費しやすい=脂肪を燃焼しやすい身体になれば、有酸素運動を組み合わせることで、より効果的に脂肪を減らすことが出来ます。
潰瘍抑制
ヒスチジン、グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸は、ストレスなどによって過剰に胃液が分泌されるのを抑え、胃腸の粘膜に傷がつくのを予防します。
また、タンパク質の原料になるアミノ酸が揃っていることで、傷の修復にも役立ちます。
肌の新陳代謝を活発にする
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層から出来ています。
表皮はさらに外側から角質層、顆粒層、有棘層の3層に分かれます。「肌がきれい」な人は、角質層が良い状態だと言うことです。
角質層は一番ダメージを受けやすい層ですから、良い状態を保つことは、角質層をいつも新しい状態に保つと言うことです。
有棘層では細胞分裂で表皮細胞が生まれ、生まれた表皮細胞は表面に押しやられて、2週間程で角質層まで届きます。
角質層に届く頃には表皮細胞の細胞核は死んでしまい、「表皮細胞の死骸=角質細胞」が皮膚表面となります。
角質細胞はそのままでは剥がれやすいのですが、毛細血管から出る成分のセラミドが角質細胞を肌に張り付かせています。やがて剥がれ落ちた角質細胞は、垢となって排泄されます。表皮細胞が角質細胞になって剥がれ落ちるまでを「ターンオーバー」といい、健康な人では28日間です。このターンオーバーが正常に行われると美しい肌を維持できるのですが、周期が長くなると肌の状態が悪くなってしまいます。
ターンオーバーの周期は年齢と共に長くなり、40代では約40日ほどになると言われています。
アスパラギン、チロシン、セリンの3つのアミノ酸は表皮細胞の材料になり、細胞分裂に必要な酵素の原料にもなります。これらのアミノ酸が足りていると、ターンオーバーの周期を正常に戻し、美肌を保つことが出来るのです。
コラーゲンを生成する
肌のハリやキメは、真皮の状態で変わってきます。真皮はコラーゲンとエラスチンという線維質と、線維質の間を埋めるコンドロイチンから出来ています。このうち真皮の70%を占めているのがコラーゲンです。
スキンケア商品でコラーゲン入りの化粧品が多く出ていますが、コラーゲンそのものの分子は大きいため、そのままでは吸収されることはほとんどありません。コラーゲン入りのサプリメントも、体内でコラーゲンがアミノ酸まで分解されてから吸収されます。
コラーゲンもエラスチンもアミノ酸から作られますので、コラーゲン入りの化粧品やサプリメントではなく、アミノ酸を摂った方が効果的だと言えます。
また、コラーゲンを生成するアミノ酸を運ぶ役目の細胞、マトリクスもアミノ酸で活性化されます。
きれいな肌の製造元と材料が一度に活性化するので、肌荒れだけでなく、皮膚の修復効果も期待できます。
免疫機能をつくる
私達の身体には免疫力が備わっています。免疫力が低下すると風邪やヘルペスなどの病気にかかったり、過剰に働くとアトピー性皮膚炎や喘息、リウマチ、膠原病などのアレルギー疾患を引き起こします。
免疫には細胞性免疫と液性免疫の2つの免疫システムがあり、両方の総合的な力で正常な自己防衛力を発揮します。細胞性免疫は白血球細胞が働く免疫で、液性免疫はグロブリンというタンパク質が、病原菌に対する抗体として働く免疫です。
睡眠不足や栄養バランスの悪い食事、ストレスなどは免疫システムを麻痺させてしまいます。
アミノ酸はグロブリンをつくる原料になり、グルタミンは細胞膜を通りやすいので、免疫細胞のエネルギーとして使われたり、免疫細胞を増やしたりします。
骨髄でつくられる免疫細胞は、15~18歳頃に一番多く作られますが、その後は次第に生産量が減少し、免疫力が落ちてきます。年齢による免疫力の低下を遅らせるには、若い頃からアミノ酸を多く摂取し、免疫細胞を多く作るようにしておくことが重要になります。
体内で100~200個、ストレスの多い人では1000個以上のガン細胞が作られると言われています。免疫力が正常に働いていると、ガン細胞が大きくなる前にキラーT細胞がガン細胞を破壊して、健康の維持をしてくれます。
体内でガン細胞が発生すると、T細胞からインターフェロン(ウイルス抑制因子)が出て、インターフェロンの刺激でマクロファージがNOS(NO合成酵素)という酵素を活性化して、アルギニンからNO(一酸化窒素)を作ります。
NOはガン細胞の中に入って、ガン細胞が呼吸するために必要な酵素を奪ったり、ガン細胞が増殖するために必要なDNAを作る酵素を働かなくします。
最近の研究では、NOは血管弛緩(血管拡張)作用があり、血圧の調整などの作用もあることがわかっています。
DNAの材料となる
細胞の中には核と呼ばれる部分があり、核の中にはDNA(Deoxyribonucleic Acid / デオキシリボ核酸)が入っていて、このDNAが私達の身体の設計図で、このDNAに書かれている情報が遺伝子です。
DNAはA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という4つの塩基が二重らせん構造になっています。言い換えれば遺伝子情報は4つの単語だけで書かれていることになります。
この遺伝子情報も、DNAを複製するための核酸もアミノ酸がなければ作ることができません。
アンモニア解毒
腎臓疾患では、食事療法としてタンパク質の摂取制限が必要と言われます。
私達が食べたタンパク質は消化器官でアミノ酸に分解され、細胞を作る原料に使われたりエネルギーとして利用されます。
エネルギーとして使われた後には、水・二酸化炭素・アンモニアが発生します。アンモニアは私達の体にとっては有害な物質で、血液中のアンモニア濃度が高くなると、肝性脳症や意識障害を引き起こすとされています。アンモニアはアミノ酸からエネルギーを作り出す時以外にも、激しい運動でも作られます。
体内の細胞にあるミトコンドリアは、私達が必要とするエネルギーを作り出す大切な役目を担っていますが、アンモニアはミトコンドリア内のエネルギー産生効率を悪くしてしまいます。細胞内のアンモニア濃度が高い状態だと、体内のエネルギーも充分につくり出すことが出来なくなってしまうのです。
肝臓に運ばれたアンモニアはオルニチンサイクル(下図参照)で無毒な尿素に変換され、腎臓へと運ばれていきます。この時に必要なアミノ酸がオルニチンなのです。
肝臓内のオルニチンが増加すると、このオルニチンサイクルが活性化し、アンモニアの分解を促進し、ミトコンドリア内のエネルギー産生効率をアップさせてくれるのです。
このように肝臓と腎臓はお互いが密接に協力することで、私たちの健康を維持しています。
腎臓の機能が低下すると尿素の排泄が減少してしまうので、血液中の尿素濃度が高くなる尿毒症を引き起こします。
尿毒症は「疲れやすい」「息切れがする」「尿量が減る」「むくみ」「食欲低下」などの症状や、「高血圧」、「高カリウム血症」、「貧血」を引き起こし、放置すると生命の危機につながります。腎臓で老廃物の処理が出来ない状態になると、定期的に血液透析(人工的に老廃物を濾過する)が必要となるのです。
腎臓疾患では尿素の発生を減らすために、タンパク質の摂取を制限するのですが、その結果、低栄養状態になってしまいます。低栄養はタンパク質制限だけが原因でなく、異化亢進(体内のエネルギー不足で筋肉などの体内組織を分解してエネルギーを得る)や、透析によって栄養素が奪われる事も原因になります。
本来は腎機能の回復にはアミノ酸が必要ですが、タンパク質制限をすると体内に必要なアミノ酸まで不足してしまいます。
また、アルコールを摂取すると脳のエネルギーを作るのを邪魔する物質(NADH)が増加します。飲酒で判断力が鈍るのは、脳がエネルギー不足に陥ることも原因です。
オルニチンがアンモニアを分解するときには、このNADHを消費しながらエネルギーの基本となるATP(アデノシン三リン酸)をつくります。
オルニチンは飲酒後の脳エネルギーの産生を促進し、飲酒からくる疲労の回復にも役立ちます。
次はアミノ酸の摂り方と必要量を解説します。
2026年7月25日

