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健康ライフ通信 > No.83

ベージュ脂肪細胞の脂質代謝。

年齢とともに低下する脂質代謝。 脂肪細胞に着目すると見えてくる、 脂質代謝を上げる方法。

私たちの体内にある脂肪細胞は、生命維持に不可欠な役割があります。主にエネルギーを蓄える働きと、気温体温の低下時に身を守るために熱を生み出す働きです。

脂肪細胞の種類と役割

慢脂肪細胞は皮下脂肪や内臓脂肪などの「蓄積系」細胞の白色脂肪細胞と、脂肪を分解して熱を生み出すことで体温を調整する「燃焼系」の褐色脂肪細胞があります。
加えて最近では第三の脂肪細胞とも言われるベージュ脂肪細胞が、肥満や生活習慣病の治療目的として注目を集めています。
白色脂肪細胞は体内の栄養が枯渇した時に、脂肪酸とグリセロールに分解してエネルギー供給を行います。
褐色脂肪細胞と同じく「燃焼系」細胞であるベージュ脂肪細胞ですが、褐色脂肪細胞は体内でも限定される場所(鎖骨上窩下部や腋下部,傍脊椎部)に存在するのに対して、ベージュ脂肪細胞は白色脂肪細胞と同様に、褐色脂肪細胞よりも広い場所に存在しています。
また、褐色脂肪細胞の代謝活性は加齢とともに徐々に低下します。これが年齢とともに脂質代謝が低下する原因です。
対してベージュ脂肪細胞の加齢による機能低下は緩やかであり、50歳以上では肥満予防のための対策にベージュ脂肪細胞が主役となってきます。

脂肪細胞の種類

白色からベージュに変身する脂肪細胞

運動によって筋肉からFNDC5と呼ばれるタンパク質が分泌され、FNDC5がアイリシン(ペプチドホルモン)に分解されます。
アイリシンが白色脂肪細胞の受容体に結合するとベージュ脂肪細胞に誘導されます。
ベージュ脂肪細胞内では脂肪を分解し、多数のミトコンドリアで燃焼・体温の上昇・エネルギーの消費を行います(代謝的熱産生)。
冷寒環境や多食時に代謝的熱産生を行う褐色脂肪細胞と比較して、ベージュ脂肪細胞は長期の温度環境に対応しながら、運動時のエネルギーが必要な場合は白色脂肪細胞から変化して、脂肪の分解による熱産生を行います。

白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞に誘導

アセロラがアイリシンの産生を促進

2023年5月の第77回日本栄養・食糧学会で、日本メナード株式会社の発表で「アセロラ粉末にアイリシンの前駆体であるFNDC5と呼ばれるタンパク質の産生を高める作用がある」と研究発表がありました。
マンゴージンジャー(ウコン科)にも同様の作用があり、白色脂肪細胞のアイリシン受容体の発現を高めてくれます。
アセロラには運動によって筋肉からアイリシンの産生を高めて、ベージュ脂肪細胞への誘導を促進する働きがあります。
運動時にアセロラを摂取すると、ベージュが増える事でミトコンドリア内のUCP1により脂肪が消費されやすい身体になり、肥満の予防・改善、脂質代謝による生活習慣病の改善が期待できます。
白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞へ誘導されることが解るようになってから、白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞への誘導に関して、どのような刺激が効率よく作用するのかを研究してきました。
そのメカニズムは不明な点が多くあり、カプサイシンのような発熱物質を摂取したり、室温を下げることで寒冷環境を作り出してみたりと、白色からベージュ化の研究は様々な方法を試してきました。
今回の日本メナードの研究で、安全性の高い天然素材からベージュ化のメカニズムを発見し、手軽に実践できる内容である事は非常に有意義な研究発表です。

運動とアセロラで脂質代謝

従来は褐色脂肪細胞の働きを上げる事で、脂質代謝を促進する考え方が一般的でした。
脂肪を蓄えている白色脂肪細胞を、筋肉運動でベージュ脂肪細胞に変化させ、細胞内の脂肪を効果的に消費する事で脂質代謝を効率よく行うことが出来ます。
飽食や運動量減少という現代の生活習慣では、全身性代謝維持の面から熱産生によってエネルギーを消費する事は、健康の維持にとって重要な生体機能の一つです。
白色脂肪細胞・ベージュ脂肪細胞を活用するためにも、運動時(または運動前)のアセロラ補給と適度な運動を心がけましょう。
筋肉運動と聞くとアスリートを連想する人が多いかもしれませんが、実は日常の家事やお買い物も想像以上に筋肉を動かしています。毎食事やウォーキング前、スポーツジムでの運動時にアセロラを補給するとベージュ化も促進されるかも知れませんね

2023年9月22日

▪️参考資料
「運動の効果を高め、脂肪を効率的に消費させる天然物の組み合わせを発見」日本メナード総合研究所
「温度生物学ハンドブック」 東京大学先端科学技術研究センター 酒井寿郎
「褐色脂肪組織における小胞体–ミトコンドリア間クロストークシグナルを介した熱産生」公社)日本生化学会